全身的疾患に関連して歯周組織…

全身的疾患に関連して歯周組織に現れる病的変化 について

全身的疾患に関連して歯周組織に現れる病的変化 について

当院では日本歯周病学会認定研修施設として常勤歯科医師、衛生士の歯周病に関する専門的な知識の習得を目標に1週間に1度、朝に抄読会を行なっています。
抄読会を通して歯周病に関する文献、論文の読み合わせをすることでスタッフ間で歯周病についての共通の知識をもち、医院として患者様により専門的で高度な歯周病治療を提供していきたいと考えています。
今後は抄読会の内容について、院内ホームページで抄読会の内容の一部を掲載させて頂きます。
皆様の歯周病に関する知識の向上に役立てていただければと思います。
 
本日は全身疾患に関連して歯周組織に現れる口腔内の病変についてです。その内容について以下に記します。
 
 
Vol 6 全身的疾患に関連して歯周組織に現れる病的変化
について
 
全身的疾患に関連して歯周組織に現れる病的変化
 
臨床的経緯を注意深く観察すると、プラークに起因する炎症性の歯肉及び歯周組織の疾患は
ホルモン障害と全身投与薬物の副作用によって強められたり共同初発因子となることがある。
全身疾患に付随して起こる口腔の病的変化は、歯肉及び歯周組織にもしばしば見られる。
このような状態になると一方の疾患である歯肉炎や歯周炎と、もう一方の疾患である口腔粘膜疾患の臨床的な違いには不明確になる可能性がある。
 
主に歯肉に生じる病変
ホルモン関連歯肉病変
薬物性歯肉増殖症
歯肉増殖、腫瘍
自己免疫疾患
特異性感染症
アレルギー
中毒症状
外傷、化学的外傷
 
 
歯肉と歯周組織の病変
代謝障害
栄養欠乏
遺伝関連性全身性症候群
血液細胞疾患
免疫不全、エイズ
 
ホルモン関連性歯肉病変は妊娠、ピルによる歯肉炎、思春期性歯肉炎、月経、更年期による歯肉炎がある。
 
薬物性歯肉炎には
フェニトイン(てんかん発作予防)という薬によって起こる。この薬には抗痙攣作用があり脳皮質の神経の活動電位が広がるのを阻害する。
全身への副作用は少ないが口腔内への副作用が発症しやすく虹的に炎症性歯肉炎を引き起こす。
治療法は口腔清掃指導を繰り返し行い、専門家によるプラークと史跡の除去をし別系統の薬に変えることが可能なら変更をお願いする。
 
他には
ジヒドロピリジン系(ニフェジピン、ニトレンジピン)はカルシウム拮抗薬で狭心症・高血圧の患者さんに用いられる薬である。副作用として口腔内に歯肉増殖を引き起こす。
シクロスポリンは免疫抑制剤で副作用として肝障害、腎障害、血圧の上昇、虹的に歯肉増殖を引き起こす。
また上記などの薬の併用などは極めて重度な歯肉増殖を引き起こすといわれている。
 
良性腫瘍-エプーリスについて
肉芽性エプーリス
巨細胞性エプーリス
線維性エプーリス
 
があり巨細胞性エプーリスと肉芽性エプーリスは比較的早く増大する。
線維性エプーリスの成長は緩慢である。
原因としては完全に解明されていないが、辺縁への刺激が原因と考えられている。
治療法は単純な切除術により除去できるが巨細胞性エプーリスは再発傾向が高く腫瘍を切除時に骨面も一層削合することがある。
 
良性腫瘍-線維症・外骨症
線維症および外骨症は歯肉に出現し、限局性のものと広範性のものがある。原因はほとんど明らかになっていない。
歯肉が厚くなっている場合には歯肉切除のみだが骨が厚くなっている場合には骨も削除する。
 
悪性腫瘍
癌腫
メラノーマ
肉腫(軟骨肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、リンパ腫など)
 
口腔癌は全ての癌腫の1〜5%である。
歯肉には悪性腫瘍はめったに観察されない。歯肉は原発性腫瘍が生じる可能性のほかに、腎臓、肺、前立腺、乳房からの転移先になる可能性がある。
臨床的には診断、生検などの診断を行う。
 
類天疱瘡
班状の歯肉の紅班を特徴としている。より重度な症例では上皮の剥離が起きる。
真の原因療法はなく痛みに関する投薬、ビタミンAを含む軟膏の使用、
重度では局所的なコルチコステロイド治療。
 
尋常性類天疱瘡
粘膜表面や歯肉と同時に皮膚に影響を与える。水泡の形成に関係なく上皮層は壊死塊で広範囲にわたり痛みを伴う。
治療法は免疫を抑制する薬品と全身的なコルチコステロイド治療
 
扁平苔癬
比較的よく見られる病変で、成人で0.2%〜1.9%の罹患率が報告されている。
粘膜に網状、びらん状、毛状、急性、丘疹状に乳白色、粗造で過角化性、発疹性、あるいは網状に覆われウィッカム線条とよばれている。
白い病変は広がりやすく白板症に類似する。
治療法はなく病変の経過観察になる。
 
白板症
 
歯肉に発症することは極めて少なく、原因は不明。喫煙者は非喫煙者と比較すると三倍の確率で白板症になりやすい。
二次感染及び悪性転化(約10%)する可能性がある。
 
 
参考文献:永末 摩美(2008)「ラタイチャーク カラーアトラス 歯周病学 第3版」p118−130 永末書店
 
日本歯周病学会認定研修施設 医療法人社団 幸誠会 たぼ歯科医院
 

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