歯肉退縮について

歯肉退縮について

歯肉退縮について

今週も抄読会の内容について、院内ホームページで抄読会の内容の一部を掲載させて頂きます。
皆様の歯周病に関する知識の向上に役立てていただければと思います。
vol.9 歯肉退縮について


・歯肉退縮(歯肉辺縁全体の)
・Stillmanクレフト
・McCallのフェストゥーン

歯肉退縮の臨床兆候は様々です。歯肉退縮は通常、唇側歯肉全体が徐々に根尖側に移動し、セメント・エナメル境が露出して起こります。
まれではありますが歯肉退縮の初期治療の兆候として、歯肉に小さな縦溝が急速に形成することがあり、Stillmanクレフトと呼ばれています。
これは重度の歯肉退縮に広がることがあります。歯肉退縮の結果として出現する症状として、残存する付着歯肉がMcCallのフエストゥーンとして知られている非炎症性の線維性の厚みのあるロール状になることがあります。
歯肉退縮が歯肉歯槽粘膜境にまで進行すると、二次性炎症が発生します 。歯肉辺縁部に歯肉退縮は、上顎前歯部では審美的な問題を引き起こします。歯根面が露出すると、歯頚部の知覚過敏症が起こる可能性があります。
歯肉退縮は歯頚部にくさび状欠損がある歯によく見られます。

・McCallのフェストゥーン
付着歯肉は線維性に肥厚し襟飾りの形をしています。
これは歯肉退縮が歯肉歯槽粘膜境を越えてさらに進行したことに対する組織反応である可能性があります。

・Stillmanクレフト
外傷性の原因による裂け目のような歯肉欠損。この裂け目は側方に広がり歯肉退縮となります。露出歯根面は重度の知覚過敏症を起こす可能性があります。 このような裂け目はプラークで覆われていることが多いです。

歯肉退縮の測定(Jahnke)
歯肉の退縮をより正確に測定したい場合には、より正確に退縮の範囲を知る必要があります。歯肉退縮の量を測定するために、 Jahnkeら (1993)は、セメント・エナメル境から歯肉マージンの垂直的な退縮量を測るだけでなく、プロービングデプスを測定し、同時にアタッチメントロスまたはアタッチメントレベルを測定します。角化歯肉の幅に加えて退縮の水平的な幅、隣在する乳頭の幅が退縮に対する外科治療を行うのに重要である。

歯肉退縮:ミリメーター単位での測定(Jahnkeら, 1993)

・垂直的な測定
1、垂直的な歯肉退縮
2、プロービングアタッチメントレベル
3 、角化歯肉の幅
4、プロービング(ポケット)デプス

・水平的な測定
5、セメント·エナメル境(CEJ)における歯肉欠損の幅
6、CEJにおける歯間乳頭の幅

歯肉退縮の分類(Miller)
Miller (1985)は治療法を重視して“歯肉退縮の分類”を考案しました。彼は歯肉退縮の範囲や部位を正確に測定せずに、一方では歯肉マージンと残存する付着歯肉に関連する退縮の幅と深さについて述べて、他方では乳頭歯肉すなわち歯間部組織の喪失について記述しています。 Millerの分類1~Ⅳは、歯周外科治療の可能性と限界を明確にするのに重要です。

歯肉退縮のMillerの分類(1985)

クラスⅠ
唇側に限局した狭い、あるいは幅広い典型的な退縮で歯間乳頭は失われていない。退縮は歯肉歯槽粘膜境まで及んでいない。

治療法:このタイプの歯肉退縮は、例えば遊離結合織移植を応用することにより、完全に100%根面被覆が可能である。

クラスⅡ
唇側に限局した狭いあるいは幅広い典型的な退縮で、退縮は歯肉歯槽粘膜境を越え可動粘膜まで及んでいます。歯間乳頭は基本的には損なわれていない。
治療法:完全な根面被覆が可能である。このような深い歯肉退縮では,
遊離結合織移植の代わりにメンブレンを用いた組織再生誘導法(GTR)
が適用される。

クラスⅢ
歯肉歯槽粘膜境を越え可動粘膜まで及んでいる広範囲な退縮である。歯間乳頭は歯肉の“退縮” と歯の位置異常により喪失している。
治療法:このような組織欠損の完全な再生は不可能である;唇側根面は部分的な被覆が可能であるが、歯間乳頭の再建は望めない。

クラスⅣ
歯槽骨と軟組織が歯の全周にわたって喪失している。この組織の
喪失は、歯周炎、あるいは歯周病専門医による行きすぎた切除療法によって引き起こされる可能性がある。
このタイプの組織喪失は、急性潰瘍性歯肉炎・歯周炎の悪化をくり返した後にみられることが多い。
治療法:外科的治療による組織の再生は、ほとんど不可能である。


参考文献:永末 摩美(2008)「ラタイチャーク カラーアトラス 歯周病学 第3版」P153-P163 永末書店

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